第四章:兵は詭道なり。
相手が油断している時にこちらは十分に準備対策をして、最高のタイミングで戦いを仕掛けたら、きっと勝つことができるだろう。
正々堂々と開戦宣誓などする必要もない。
孫武はこう言う。
兵は詭道(きどう)なり。
戦争は騙し合い(出し抜き合い)である。
すでに学んだように、仕掛けるのなら短期決戦を目指すべきだ。
そのためには情報をコントロールして、相手に気づかれぬように準備をする。
戦うそぶりを見せない
自軍が戦うそぶりを見せないでいると相手も油断する。
油断どころか戦いが起こること自体に気づかない場合もある。
とにかく自軍が戦いの準備をしていることを悟られないようにすべきだ。
必ず敵の間(かん)の来たりて我を間するものをもとめ、因(よ)りてこれを利し、導きてこれを舎(しゃ)す。
自軍のことを探る敵の間者(スパイ)がきたら、探し出して買収し、逆スパイとする。
自軍の見方として送り込んだスパイが味方の振りをしていて実は寝返っていたとなれば情報戦では大いに有利になる。
敵軍は本当は武器を大量に製造し、多くの兵を訓練しているにもかかわらず、自軍が送り込んだスパイが「敵軍は内部の政治で揉めていて、戦争どころじゃなかったですよ〜」なんて嘘の報告をすれば油断するに決まっている。
小さく見せる
とにかく自分のことを小さく見せるのが騙し合いの真髄である。
能なるもこれに不能を示し、要なるもこれに不要を示し、
できるのにできないように見せ、必要なのに不要に見せ、
近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、
近づいているのに遠ざかるように見せ、遠ざかっているのに近づいているように見せ、
利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、
(相手が)有利だと思わせて誘い出し、混乱させて討ち取る。
実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、
(相手が)充実していれば退いて備え、(相手が)協力であれば戦いを避ける。
怒にしてこれをみだし、卑にしてこれをおごらせ、
挑発して消耗させ、卑屈(低姿勢)に出て油断させる。
佚(いつ)にしてこれを労し、親にしてこれを離す。
(相手が)十分に休養して体力があれば疲れさせ、(相手が)団結していれば分離させる。
その無備を攻め、その不意に出ず。
相手が準備不足な点を攻め、意表をつく。
孫武は徹底してこれを説いている。
- 相手の油断を誘う
- 勝てない戦いはしない
- 相手の弱みを握る
- 相手の強みを弱らせる
屈強な大男でも家族がいれば家族を人質にとったら倒せるだろうし、頭が弱ければ知略で陥れることもできる。
とにかく、負けたら死ぬ世界において、真正面からぶつかるのはリスクが高いというわけだ。
現代のビジネスなどに適用するなら、法を犯してまでやることではないが、法を遵守しながらでも、取れる戦略は数多くあるはずだ。個人的には「倫理」は遵守せずともよいケースはあると考えている。
次回予告
風林火山という言葉を知っているだろうか。
これは孫子からきている、戦い方の指南だ。
情報格差のある中、どうやって戦うのか、次回はそれを明らかにする。
お楽しみに!
参考図書
この本で勉強させていただいています。興味のある方はこちらをどうぞ。