第三章:善く戦う者は不敗の地に立ち、しかして敵の敗を失わざるけり。
孫武の生きた時代は、リアル戦国時代。
負けたら死ぬ(やり直しができない)
勝っても疲弊してたら(第三者から)やられる
という厳しい世界。
そんな中孫武は2つの原則を掲げた。
原則1:不敗
勝つべからずは己にあるも、勝つべきは敵にあり。
「不敗」の態勢を作れるかは自軍にかかっているが、「勝利」は敵軍にかかっている。
勝ち・負けという二元思想ではなく、「負けていない(勝ってもいない)」状態というものも状態として存在する。
確かにまだ勝負がついていない段階では勝ちとも負けとも定義されていない。
この「不敗」状態を維持するのは自軍の努力でできる。
その状態を続けていれば、敵が失敗をして勝機が見えてくるかも知れない。
善く戦う者は不敗の地に立ち、しかして敵の敗を失わざるなり。
戦上手は不敗の態勢を作り、そして敵の「敗」を逃さない。
実力が拮抗している敵国の間で戦争が始まる気配がある。しかし、慌ててはいけない。じっとリソースを蓄えながら、準備をしながら戦いの時を待つ。そうこうしているうちに、敵国でクーデターが起きて情勢が不安定になった。自国がが戦いを仕掛けるのはその時だ。
「不敗」の大勢で相手が崩れるのを待ち、逃さず捕らえるのだ。
著者の守屋先生が示唆に富んだエピソードを紹介している。
この「不敗」の精神は金融トレードに完全に当てはまる。負けると種銭がなくなり復活できない。負けない戦い(いたずらにリスクをとらず)をしつつ、確実に勝てるというチャンスに勝負を仕掛けるのがプロとして生きていく考えだ、と。
(私も資産運用をしていて、過去には失敗もしているので納得感がありました)
原則2:短期決戦
兵は拙速を聞くも、いまだ功の久しきをみざるなり。
短期決戦の成功例は聞くが、長期戦に持ち込んで成功した例は聞かない。
「もう終わってしまったのか!?」というようなスピード決戦がよい。
確かにここまで「戦いで疲弊してはならない」と学んだ。
長期戦は疲弊を招くので避けるべきだ。
実際に短期決戦は可能なのか?
場合によっては可能だ。相手を復活や反撃できないように完膚なきまでに叩きのめすか、仲間として取り込んでしまえばよい。
しかし、こちらが短期決戦で終わらせるつもりでも、終わらない戦いというのはある。
例えば、とある商品の大幅値下げし、市場で最安値を掲げることで市場の占有率を二位から一位に躍り出るにするとする。それで元一位の会社が潰れたり、その商品の販売を断念すれば完全勝利となり、短期決戦する意味がある。しかし、相手も資本力があり、体力勝負の終わらない価格競争が勃発してしまえば、短期決戦とは行かなくなる。
「短期で勝てる相手とだけ戦う」というが、このような目先の小さな勝利は大きな戦いの口火になるだけで、真の勝利ではないことを理解するべきだ。
次回予告
不敗と短期決戦・・・なんだか矛盾しているようにも感じる。
不敗は勝ちも負けもしない態勢を維持するので、長期的な視点。短期決戦は短期視点。
短期決戦で勝てるチャンスを辛抱強く伺って、仕掛けると気は一気に畳み掛けるイメージだ。
孫武はいう。
どういうことだ・・・?
お楽しみに!
参考図書
この本で勉強させていただいています。興味のある方はこちらをどうぞ。