第二章:彼を知り、己を知れば、百戦して危からず。
自分と敵の力を知ることはとても重要だ。
孫武はこう言う。
彼を知り、己を知れば、百戦して危からず。
敵を知り、自分を知れば、負けることはない。
おそらく孫子の言葉で最も有名な言葉だ。
孫武はここで「敵」ではなく「彼」という文字を使っている。
敵という字も随所で使われているので、「彼」を意識して使っていると推測できる。
彼とはなんだろうか?
「目先の敵だけでなく、周辺の敵すべて」
という意図を含んでいる可能性がある。
相手との実力差が大きかった場合、相手と自分をよく知るだけで負けないのか?
圧倒的な力の差があれば知略を駆使しても負けてしまうことはある。
孫武は「五事七計」という5つの考慮すべき基本要素に意識しながら7つの視点で比較する、と書いた。
五事:考慮に入れる基本要素
- 「道」
民を上と同じにさせる理念。 - 「天」
昼夜、寒暑、晴雨、季節などのタイミング。 - 「地」
地形、広さ、地勢の険しさ、地形の有利不利など。 - 「将」
将軍(トップ)の器量(知謀、信義、仁慈、勇気、威厳など)。 - 「法」
軍の編成、指示系統、軍需物資の管理など軍運営の洗練度。
参考図書の著者の守屋先生は、この5つでは不足していると書いている。
「兵(兵力)」と「金」だ。
この内容は現代的な戦争にも大いに通じるものはあろうが、高度化されている分注目すべき点は他にもあろう。またいくつかは陳腐化しているものもあるかも知れない。
企業間の戦いなどさらに抽象度や間接度が上がるとこのリストもそれに合わせてカスタマイズすることになるだろう。
七計:比較の視点
- 主、いずれか有道なる
どちらのトップが大義をいかに末端まで浸透させているか。 - 将、いずれか有能なる
将軍(実行部隊のトップ)のどちらが有能か。 - 天地、いずれか得たる
「天」の利、「地」の利、どちらに有利か。 - 法令、いずれか行わる
ルールはどちらが徹底し、軍備はどちらが優れているか。 - 兵衆、いずれかならいたる
兵はどちらが訓練され、組織化されているか。 - 賞罰、いずれか明らかなる
賞罰はどちらが公正になされているか。
では、これら7つの視点、ポイント制で5−2でうちは5つ優れているから戦えば勝つのか?というとそうでもないのは明白だ。これらを比較した、その結果の取り扱いはどうなのかという点においては不明瞭である。
著者の守屋先生は孫武はコンサル業のようなものなので、全ての手の内を書いていない部分が全体を通して各所見受けられると書いている。
また、こちらに関しても、本当の戦争においてはかなり有用な視点だと思われるが、やはり現代戦では多少アレンジすべきだろうし、 広く応用するなら、大きく変更した方が良いかも知れない。
サラリーマンとしての個人的な考えは、ビジネスフレームワークなどを使って「この商品は市場で勝てるか?」と言った判断をすることが、この部分に当たると考えている。
次回予告
孫武は戦いにおいて2つの原則があると書いた。
その2つの原則とは・・・?
お楽しみに!
参考図書
この本で勉強させていただいています。興味のある方はこちらをどうぞ。