目次
書籍のご案内
このブログの一部を引用して、大幅加筆して書籍化しました。
時代背景や固有名詞などがわからないために、文章の翻訳だけではよくわからなかった部分もあると思います。
書籍では全篇に補足を追加したので、より深く理解できるようになっています。
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「超軟訳」 マジわかるんですけど孫子(超読みやすい!)
- 0. 孫子てなに?
- 1. 待って、ウチラ勝てるんだっけ?
- 2.戦争のコスト。
- 3. 戦わずして勝つ!
- 4. 勝てる戦いに勝つ。
- 5. 勢いって大事じゃね?
- 6. 主導権を取れ!
- 7. 敵を出し抜け!
- 8. 勝つ将軍とは?
- 9. 行っとく?やめとく?
- 10. 地形を利用する!
- 11. そこ、どういう場所?
- 12. 火攻めだ!
- 13. スパイ超大事な件。
参考図書
「超概要」最高の戦略教科書 孫子(硬めの記事)
- 第一章:百戦百勝は善の善なる者にあらず。
- 第二章:彼を知り、己を知れば、百戦して危からず。
- 第三章:善く戦う者は不敗の地に立ち、しかして敵の敗を失わざるけり。
- 第四章:兵は詭道なり。
- 第五章ノ一:兵の情は速やかなるを主とす。
- 第五章ノ二:人を形せしめて我に形なければ、即ち我は専にして敵は分かる。
- 第五章ノ三:およそ戦いは、正を以って合し、奇を以って勝つ。
- 第六章:善く戦う者は、人を致して人に致されず。
- 第七章ノ一:それ兵の形は水に象る。
- 第七章ノ二:激水のはやくして石を漂わすに至るは、勢なり。
- 第八章:郷導を用いざる者は、地の利を得ること能わず。
- 第九章:称は勝を生ず。
- 第十章ノ一:令するに文を以ってし、これを斉うるに武を以ってす。
- 第十章ノ二:将とは、智、信、仁、勇、厳なり。
- 第十一章ノ一:明君賢将の動きて人に勝ち、成功、衆に出づる所以のものは、先知なり。
- 第十一章ノ二:反間とは、その敵の間に因りてこれを用うるなり。
- 第十一章ノ三:必ず先ずその守将、左右、謁者、門者、舍人の姓名を知り、吾が間をして必ずこれを索知せしむ。
参考図書
13. スパイ超大事な件。
孫子の教え。
10万の大軍でなん百Kmも遠征するとなると、民の出費、国の出費、一日に多額の金がかかる。国の中も外も大騒ぎ、民は道で疲れ切ってるし、本業ができなくなる家が70万件にもなる。
そうやって苦しい戦闘状態を数年続けた後、勝負はたった一日で決まる。
なのに称号を与えたり、給料を上げたり、賞金を与えることを惜しんで敵の情報を探ろうとしないのは、まったくお話にならない。人の上に立つリーダーじゃない。主君の助けになってない。勝者になんかなれない。
イケてる名君、名将が軍を動かして敵に勝ってずば抜けた成功を収めるのは、先に敵の実情を知っているから。
敵の実情は、神様が教えてくれるものでもないし、過去の事例から推測できるものでもないし、何かを測ってテストできるものでもなくて、必ず人(スパイ)からの情報でわかるもの。
スパイのタイプ5種類。
- 郷間
敵国の民を自軍のスパイにする。 - 内間
敵の役人・隊長を自軍のスパイにする。 - 反間
敵のスパイを自軍のスパイにする。(二重スパイ) - 死間
死を覚悟してでっち上げた嘘情報を敵に伝える。 - 生間
敵陣に送り込んだ自軍の人間が情報を生きて持ち帰る。
5種類全部のスパイを同時に使って、敵にはそれがばれない。控えめに言っても神の所業。
スパイは主君にとって最も大事な宝もの。
全軍の中でスパイ以上に上層部と通じ合っていて、ご褒美も一番多くて、やってることが秘密な存在はない。
賢くないとスパイは使いこなせない。
人格者じゃないとスパイは利用しきれない。
鋭い洞察力ができないと本当の成果をあげることはできない。
マジで繊細&微妙。でもスパイを使わない場面なんてない。
スパイが情報を漏らしたら、そのスパイもその情報を聞いた者も全員死刑。
敵の軍を攻撃しようと思ってるとき、城を攻めようと思ってるとき、人を殺そうと思ってるとき、かならず自分のスパイを使ってその守備隊の将軍、将軍の左右の側近、将軍の秘書、門番、世話係の名前を調べ上げる。
絶対に自国に潜り込んで諜報活動をしてるスパイを見つけ出して、めちゃいい待遇を与えて、寝返らせて自国のスパイにする。
こうして二重スパイ「反間」を作る。
これで敵のことが分かるようになる。
さらにこの反間(二重スパイ)によって敵国の民スパイ「郷間」、敵国の役人スパイ「内間」をゲットして使えるようになる。
これで敵のことが分かるようになる。
敵国に潜り込んでかく乱するスパイ「死間」は、嘘の情報をでっちあげて敵国に伝える。
これで敵のことが分かるようになる。
敵国から情報を持ち帰るスパイ「生間」が期待通りの働きをできるようにする。
主君はこの5種類のスパイの使い方を絶対に理解しておかないといけない。
特に重要なのが二重スパイの「反間」。
だから反間は特にいい待遇を与えないといけない。
昔、「殷(いん)」という国が興ったとき、「伊摯(いし)」という人が敵国の「夏(か)」にいた。
「周(しゅう)」という国が興ったとき、「呂牙(りょが)」という人が敵国の「殷(いん)」にいた。
こういった頭のいい名主君(明君)、名将軍(賢将・智将)だけが、優れた知恵を持つ人をスパイにして大きな功績をあげることができる。
スパイは戦争の要(かなめ、キーポイント)であって、全軍がそれによって動く。
補足
伊摯(いし)
この人は紀元前1600年頃の伝説的な政治家らしい。孫子が書かれた時代よりも1000年以上も前の話。
そりゃー孫子が書かれたときにすでに伝説になってるよね。
この人は「夏(か)」という国にいたんだけど、その時の王様が無茶苦茶な人だったから、上司の天乙(てんいつ)と一緒に夏を倒して「殷(いん)」という国を興してその繁栄に大いに貢献したらしい。
その後、天乙が殷の王様になったんだけど、伊摯はしっかりサポート、そのあとに続いた息子たち二人の王もしっかりサポートした。
でも、4代目、孫の代の「太甲(たいこう)」がバカ息子で全然ダメだったからいったん追放して、しばらく代理で政治をやったらしい。3年後に太甲が改心したのを確認して、太甲を戻して王に迎え入れたんだって。
こんな感じで素晴らしい人物みたいに伝えられてる。
ただ、別の歴史書では、太甲を追放して王になったけど、7年後に太甲に討たれたともいわれている。
太甲がバカ息子だから心を入れ替えさせるために追放するというのは、あくまでも追放するための口実で本当は自分が王になるためだったんじゃないかと言う見方もあるらしい。
どっちにしろ、伊摯は自分が仕えている国を倒すために活躍した人物として有名だったらしい。
いい人なのか、悪い人なのか、もう昔過ぎて何が本当かわからないね。
実在したかどうかは疑われてないんだろうけど、そもそも伝わってる生まれ方のクセがスゴイ。
お母さんが大洪水に巻き込まれて桑の木になって、その幹から生まれたって言われてる。
生まれ方のクセw
次回予告
もう孫子の本文は終わりだよ。
早かった?
早ければ早いほど、この本の目的は達成されたということ。
だって孫子の本文を余すことなく翻訳してあるのに、こんなにさらっと読めたんだから。
参考図書